【漫画感想】『死亡遊戯で飯を食う』REC.028:ゴールデンバスの顛末

『死亡遊戯で飯を食う』REC.028 のレビュー感想です。

“一言あらすじ” :『死亡遊戯で飯を食う』REC.028

30回目のゲームとして参加した<ゴールデンバス>から辛くも生還した幽鬼。彼女がゲームをクリアした後の 顛末が語られる。エージェントの車の中で目覚めた幽鬼は、今回のゲームに関して彼女の抱いたある懸念についてエージェントに尋ねるが…。そして、今回のゲームでついに自らの身体に不可逆の欠損を与えることになった幽鬼は…。

<ゴールデンバス>の顛末:御城と狸狐の死亡確定

今月のコンプエース 2026年1月号はREC027-2、REC028の2話掲載です。来年1月からのアニメ化の影響でしょうか。ちなみに次号は休載とのこと。

さて、REC028では幽鬼にとって30回目の参加ゲームである<ゴールデンバス>の顛末が語られました。個人的に残念だったこととしては、御城と狸狐の死亡が確定しました。どちらも確実に死亡したという描写がなかったので個人的には生存の可能性を期待していたのですが…。

幽鬼と御城の因縁の決着は個人的には少しあっさりしすぎな結末の気もしましたが、実際人が死ぬ時なんて存外あっさりしたものだろうし、この作品にはこれくらいがちょうどいいのかな。誰も彼もが死に際して、大立ち回りを演じたり、心に残る名言を残したり、その場の”主役”になれるわけではないですからね。

そもそも、この作品では重要そうな人物も含め登場人物たちが当然のように、突然に、あっけなく死に、まるで使い捨てかのように退場していきますからね…。人の死なんて結局はそんなもの、死んだらそれまで、…みたいな作者の意図があるのかもしれませんね。なんといってもここで描かれているのは”死亡遊戯”な訳ですから。一つ一つの死に価値や尊さなんてあっちゃダメなんでしょう。ただ観客の享楽のために消費されていくだけのものでないと…。

しかし、御城の死は思いの他ショッキングでした。御城は彼女自身が思い描いていたような美しく劇的な再戦ではなく、泥臭い取っ組みあいの上での溺死という美しさとはかけ離れた、見方によれば惨めな最期を迎えました。そして何よりゲーム終了後、湯船に沈んだ彼女と思わしき死体は、玄関チームのプレイヤーの一人にただ一瞥されただけ。玄関チームのリーダーだったにも関わらず、誰一人として彼女のことを気にかけることもなく、その死体は捨て置かれました。

なんとも寂しく虚しい結末でしたね。

御城はもっと長く登場し続けるキャラクターだと持っていたのに…。

ちなみに、ゲームの結果は、幽鬼が一抜けした後は特に何も起きることなく、玄関チームが隠された木札を全て見つけ、その時点での生き残り露天風呂チームが6名、玄関チームが60名の計66名は、残りの絶縁靴67足を使って全員生還ということでした。

<ゴールデンバス>でのペナルティ

今回のゲームは幽鬼にとて”三十の壁”である他に、もう一つ非常に大きな要素が絡んでいました。それが、金子の父親たち、ゲームへの反抗勢力の接触です。今回のゲームでは、幽鬼は意図せずとはいえ金子の父親に渡された”発信機”を体内に忍ばせた状態で参加することになりました。

<ゴールデンバス>において幽鬼が一人だけ違和感を覚えるほどに起床が遅れたのはどうやらそのペナルティだった様です。エージェントさんは解答を濁していましたが、”何もしないわけにはいかなかったのでしょう”という答えは、”ペナルティなのか”という幽鬼の問いかけを暗に肯定している様なものですね。

今回の件は幽鬼にその意図はなかったとはいえ、側からみれば”発信機を体内に隠して持ち込んだ”という事実だけが存在するわけです。スパイとして始末されてもおかしくないような状況でしたが、ペナルティだけで済むというのは温情があるというのか、それとも…。

なんにしても結局は、全てを”遊戯”として組み込んでしまうあたり、運営の底知れない巨大さが恐ろしい…。

そもそもこのペナルティが純粋に発信機の件だけに関連するものなのかは気になりますね。ちょうど30回目のゲームの際にこんなことが起こるのもタイミングが良すぎますし…。三十の壁には運営は何も関与していないという話ですが、実際のところは明確に”作為を加える”とはいえないレベルではあるものの多少ゲームをいじっているようにも見えますから。このペナルティもその一環である可能性もありえます。

そもそも幽鬼の体内に発信機があることを運営はどう知ったのでしょう。毎回プレイヤーたちは体の中まで徹底的に調べられてからゲームに参加させられるということなのか、それとも金子の父親が幽鬼に接触し、発信機を渡したことをあらかじめ把握していたのか…(ちなみに金子の父はすでに…)。あるいは、金子の父親が幽鬼に接触したのも、幽鬼にペナルティを課すために裏で運営が誘導したことだったという可能性がないとはいえません。

まあ、幽鬼が発信機を飲み込んでしまったのは、偶然ですし、そこに運営の意図が介在すると考えるのはちょっと無理がありますかね。

幽鬼の負った不可逆の欠損

<ゴールデンバス>をクリアし、辛くも三十の壁を越えた幽鬼でしたが、今回左手の中指から小指までの3本を失いました。狸狐の殴打によってちぎれかけていた指が、玄関広場を通過する際に落ちてしまった様です。落ちた指は玄関の床に流れる強力な電流によって焼かれてしまって、運営の技術力を以ってしても復元できないとのこと。

指を失った自らの左手を見て、”とうとう私にもこの時が来たか”と幽鬼は心の中で呟いていましたが、この彼女の身に起きた”不可逆の欠損”は三十の壁を越えた彼女自身の何かしらの変化を象徴しているのかも知れませんね。そもそもこんなゲームに30回も参加し続けている時点で異常ですが、ここから先はさらに人間としての何かしらを欠落していかないと進めない世界なのかも知れませんね。

そして、指を失ったことで幽鬼もまた御城たち同様に<職人>と呼ばれる人物に世話になり、義指を得ることになります。<職人>というなかなかに雰囲気のある呼び名の人物(それとも団体名?)の登場も楽しみですね。

それにしてもこれが幽鬼にとって初めての身体の欠損というのは意外でした。<キャンドルウッズ>では伽羅に右目を斬られ、<ゴーストハウス>では、自ら足を切り落としたりと、これまでも損傷自体はそれなりに派手なものもあったので、すでにどこかしらは義肢になっているのかと思っていました。

運営のエージェント

新プレイヤーのスカウト、参加プレイヤーたちの送迎やゲームへの招待など、幽鬼たちのサポートを行うエージェントたち。彼女たちも未だに謎に包まれた存在ですが、今回は幽鬼を担当しているエージェントさんに少しだけ焦点が当たりました。

とりあえず、分かってはいたものの改めてエージェントさんの美貌がすごいんですよね。美少女を集めたプレイヤーの女の子たちを圧倒するくらいの美貌の持ち主です。なんの確証もありませんが、もしかすると、彼女も元プレイヤーだったりするのかな。

心の底から幽鬼たちプレイヤーを応援しているエージェントさん。彼女もまた歪に歪んでいるようです。プレイヤーと違い”死亡遊戯”のメインとなることはない彼女たちですが、今後どう物語に関わってくることになるのか、楽しみですね。

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